「東大が軍事研究解禁・・・」の報道について

2015年1月16日産経新聞朝刊の第一面に掲載された記事に驚きました。sankei.comのオンラインニュースにも出ています。そこには、

 東大は昭和34年、42年の評議会で「軍事研究はもちろん、軍事研究として疑われるものも行わない」方針を確認し、全学部で軍事研究を禁じた。さらに東大と東大職員組合が44年、軍事研究と軍からの援助禁止で合意するなど軍事忌避の体質が続いてきた。

ところが、昨年12月に大学院の情報理工学系研究科のガイドラインを改訂し、「軍事・平和利用の両義性を深く意識し、研究を進める」と明記。軍民両用(デュアルユース)技術研究を容認した。ただ、「成果が非公開となる機密性の高い軍事研究は行わない」と歯止めもかけた。以前は「一切の例外なく、軍事研究を禁止する」としていた。

とあります。

情報理工学系研究科に4年近く前まで在籍した者にとってはまったく意外なことでした。2004年の国立大学法人化のときに研究科長を3年間務め、法人化に伴う国立大学の変化も見た者が、4年前に離れてその後は足を踏み入れないできた組織で何が起こっているのかと関心を持たざるを得ません。

記事で引用されている情報理工学系研究科の「科学研究ガイドライン」には

学問研究の両義性

本学歴代総長の評議会などでの発言に従い、本研究科でも、成果が非公開となる機密性の高い軍事を 目的とする研究は行わないこととしています。共同研究の過程で、意図せずにそのような研究に関わっ てしまうおそれがありますので、注意してください。 なお、多くの研究には、軍事利用・平和利用の両義性があります。本学では、個々の研究者の良識の もと、学問研究の両義性を深く意識しながら、個々の研究を進めることを方針としています。

と書かれているのですが、これが2014年12月の改訂によるものなのでしょうか。

このガイドラインが最初に作られた頃に大学を離れましたので、その後の議論は知りません。研究科では十分な議論が行われたことでしょう。このガイドラインに書かれていることだけでなく、全学の方針の変更をも主導したのでしょうか。「多くの研究には、軍事利用・平和利用の両義性があります。」というところがその根幹なのでしょうか。「研究」に両義性があるというのは理解できません。「研究成果」を利用する場面には多様性があることはだれもが認めるでしょう。しかし、大学における研究自体に両義性を認めることには賛成できません。

上記の記事には「東大は(軍事研究の)解禁理由について・・・」とありますから、取材に対して公式に意見を表明したのでしょう。大学における学問のあり方に全学的な議論がなされたのでしょうか。上に引用した記事のタイトル「東大が軍事研究解禁 軍民両用技術研究容認 政府方針に理解」にあるように、政府の方針に合わせるというのが大学の決定なのでしょうか。疑問です。

また、こうした報道によって、大学界や学術界の「雰囲気」が固定化される懸念を抱くとともに、わが国の大学における学術研究にとってきわめて大きなできごとだと思います。

なお、本Blogでは筆者の現所属機関およびこれまでに所属した機関・組織から独立して、個人の意見を表明しているものです。

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