研究者情報の公表と活用について

大学や研究機関に在籍する研究者は自らの研究成果を論文などで公表していますが、その情報はどのように公開されているでしょうか。論文誌に掲載される論文は、その分野の研究者は論文誌を見て知ることができるでしょうが、それでも、論文誌は数多く存在しますので、網羅的に見ることは難しいでしょう。また、少しでも分野が違う研究者にとっては、研究成果はなかなか分からないものです。一般に、研究者が公的な立場で研究を行っていることを考えれば、研究者自らがその研究成果などを社会に向けて公表すべきではないでしょうか。研究者情報の公表は、学術界における自律的な学術公正性の確保にとっても有用だといえるでしょう。今回は、研究者に関わる情報を自ら公表するとともにそれを活用することを考えてはどうかという提案です。

学校教育法施行規則等の一部を改正する省令(平成22年文部科学省令第15号)が平成22年6月15日に公布され、平成23年4月1日から施行されました。この改正の趣旨は、「大学等が公的な教育機関として、社会に対する説明責任を果たすとともに、その教育の質を向上させる観点から、公表すべき情報を法令上明確にし、教育情報の一層の公表を促進する」こととされています。この省令は、各大学が9項目についての情報を自主的に公表することを求めています。

そのなかで、教員に関わる情報の公表については、以下のように示されていて、各大学は「各教員が有する学位及び業績」を公表することになっています。

【3】 教員組織,教員の数並びに各教員が有する学位及び業績に関すること。(第3号関係)

その際,教員組織に関する情報については、・・・に留意すること。

教員の数については、・・・に留意すること。

各教員の業績については、研究業績等にとどまらず、各教員の多様な業績を積極的に明らかにすることにより,教育上の能力に関する事項や職務上の実績に関する事項など,当該教員の専門性と提供できる教育内容に関することを確認できるという点に留意すること。

読者の方々はこういう状況をご存知でしたでしょうか。すべての大学は教員に関する情報を公表しているのです。

各大学での対応はさまざまです。在籍の教員の学位や経歴、研究業績、学内での活動状況、担当の教育科目等を一覧にして公表していることが多いようです。大学でこのような情報をとりまとめるにあたって、研究業績以外の情報は人事記録等から得られるでしょうが、研究業績については、各教員が情報を提供するしかありません。

大学教員や研究機関の研究者は自らの研究業績はなんらかの形で記録しているでしょう。職を得るにしても、競争的研究資金を得るにしても、経歴等とともに研究業績や教育上の業績などが求められるからです。教員は自分の記録をもとにして、上にあげたように組織の求めに応じて、また、科学研究費等の公募への申請の際には、それぞれの様式に変換して提出することになります。

研究業績にあげる成果物は、一般的には学術論文や会議録等で公表されている著作物でしょうから、その一覧表を様式に従って記載することになりますが、どれが原著の学術論文であり、どれがピアレビューを経て公開されたものであるのか、研究成果として評価すべきものだということは研究者が自らの判断で示さなくてはなりません。そこには、学術公正性の観点から、偽装や誇称があってはならないことは当然です。「こういう成果を『論文』というのはどうか?」といった疑問は直ちに、その研究者個人の「学術界の常識」への疑念につながります。

最近、多くの研究者が Read&ResearchMap に情報を登録していて、教員情報の公表に活用している大学等も増えているようです。もちろん、一般に公開されていますので、研究者名で検索したり、研究課題等での検索もできます。研究者にとってありがたいのは、論文等の情報を個別に入力しなくても、公表されている各種のデータベースから取り出してきて、「候補」としてリストアップする機能があることです。もっとも、海外の出版物についてはまだ十分ではありませんが、整備が進められていますので、近いうちにできるようになるでしょう。また、Read&ResearchMap に登録した個々の教員の情報をもとにして、大学による教員情報の公表用のWEBページを生成したり、教員が申請する科研費の業績リストを生成することにも活用できるということです。

研究者自らが個人の記録の置き場として Read&ResearchMap を利用して、社会に研究成果を公表するとともに、研究者が同じ分野や関係の研究者コミュニティに情報を提供するためにも活用できるでしょう。こうした活用の利便性が高まれば、研究者情報を自ら提供する研究者が増えるでしょうし、学術界での自律的な学術公正性にも効果が得られると思います。

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