学術界での利益相反について

学術界における「利益相反」は、研究不正の文脈の中では表面に出てこないようですが、研究者の不適切な行為として「学術公正性」の観点から捉えるべき課題だといえるでしょう。以前にも参照した「日本の科学を考える」サイトでの議論の中で感じたことです。職務上の「利益相反」というのは、「職務として中立の立場で業務を行うべき者が自己や第三者の利益を図り、職務の中立性を損なうこと」だといえます。

たとえば、ある分野の研究者の「第一人者」が公的な研究プログラムの立案に携わっていながら、自らそのプログラムから研究費を得るといった状況はどう考えればよいのでしょうか。その分野の「第一人者」と目される研究者は、研究行政の担当部署から研究プログラムの立案に参画を求められることもあるでしょう。その上で、そのプログラムで公募が行われるようなときには、それに応募して研究プロジェクトを提案することもあり得ます。公募されないときでも、プロジェクト実施者についてはなんらかの選定が行われることになり、「第一人者」のプロジェクトが採用されることもあるでしょう。

こういう場面では、プログラムの立案に参画した研究者は「第一人者」なので、そのプログラムのなかで研究することが当然だと見られるかも知れません。なにしろ、「第一人者」なのですから、プログラムを成功させるためにも、プログラムの推進者からはそうして欲しいという意見も出てくることでしょう。

しかし、これは健全な研究プログラムの姿ではありません。どうしてこういうことが起こるのでしょうか。端的に言えば、研究者が当面の研究費を得ることを目的としているからでしょう。高い見識を持って広く学術界のことを考え、説明責任を果たすことを念頭に置くならば、研究者自らが利益誘導を行うことはないはずです。そうでないからこのようなことが起こるのです。「立場が違うから」という言い訳もされるでしょう。たしかに、中立的に振る舞うことはできますが、それでも、「自己の利益を図り、職務の中立性を損なう」ことです。

こうした形の利益相反は学術界ではときに話題になりますが、「形式的には問題がない」、「研究不正ではない」ということで、上にあげたような「第一人者」はそれであり続けるということになっているようです。しかし、学術界における利益相反行為は、当然、「学術公正性」の観点からも自律的に排除すべきことです。

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学術界での利益相反について」への1件のフィードバック

  1. 研究者の兼業・兼職について | 武市正人の Blog

    […] 兼業・兼職として務めるときに、本務や所属組織の意見を反映させようというのはおかしいことです。組織の役職にある者はとくに留意すべきでしょう。当然のことながら、このことは分かっているはずですが、ときにそうでもないことに出会います。また、場合によっては、「人格は一つだから」ということで、本務や兼業において見境のない行動をとるようなこともときに見受けられます。このようなことは、いずれも、学術界における利益相反にもつながりかねません。学術界では気づかないのか、あるいは、あえてそういう指摘を避けようとしているのか分かりません。当事者は自らの意見表明の責任を組織に転嫁することにしているかも知れませんし、結果的に兼務によって所属組織に利便を図ることになるかも知れません。兼務・兼職にあたっては、このようなことがないように厳に戒めるべきだといえます。 […]

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