学術「公正局」について

最近の「研究不正」に関わる議論の中で、不正に対応するためのシステムとして「公正局」の必要性が議論されています。あるいは、研究上のことだけではなく、学術界や大学界のその他の不正への対応も考える必要があるかも知れません。研究不正の背景には、研究者個人の評価やそれに基づく研究職、大学教員等の人事や雇用に関することも考えられますし、そこには、学位詐称や業績捏造、業績誇称といった不正も問題とされるでしょう。「専門的な見地から」という理由で、社会から距離を置いてきた学術界のさまざまな慣行が問題を複雑にしている面もあると思います。

「公正局」の議論の中では、第三者によって積極的に調査することの必要性が指摘されています。これまで、研究不正に関する対応が、研究者の所属機関に委ねられ、調査とその結果に基づく処置が組織の判断でなされてきたことへの問題提起だといえるでしょう。

「日本の科学を考える」サイトはこれまでにも参照させていただいておりますが、その中でも「研究不正問題3 公正局の立ち上げは可能か、本当に機能するのか?」では、「公正局」の設立について具体的な議論が交わされています。

また、「世界変動展望」サイトでは、「研究不正調査制度の問題点について」、「設置すべきは米国ORIのような機関ではなく、どんな分野も客観的、積極的、強制的に調査できる第三者機関」といった整理がなされています。

論文の不適切な発表については、掲載論文誌の責任による取下げで発見されることがあるでしょう。「Retraction Watch」サイトには次々と報告されています。もちろん、それ以外にも、論文の捏造や重複投稿が発覚して、それが論文の取下げになることもあるでしょう。問題は、むしろ、この後の処置だといえます。わが国で、こうした不正(の可能性)が指摘されたときに、それを調査するのは、その研究者の所属機関ということが多いようです。しかし、上にあげた議論の中では、研究者の所属組織や研究経費の提供機関が他者から指摘された対象事案を事後に調査するには、限界があるのではないかという問題提起がなされているわけです。

独立して積極的に調査する機能を果たせる組織はどこなのか、議論の余地があるでしょう。「公正局」がいかにして公正な判断ができるか、また、その調査機能を有することができるか、そのような法的な裏付けをどのようにするのか、等々。

学術界では、本来の研究活動のあり方として、政治や権力からの独立性を確保すべきであるという基本的な立場があります。このことから、「公正局」を学術界の外に置くことについては、慎重に考えなくてはならないといえるでしょう。しかしながら、中立的で公正で、ときには強制力のある調査機能が求められると、学術界ではどうすればよいのでしょうか。学術界の自律性が問われているといえます。科学者コミュニティを代表する組織としての日本学術会議は内閣府に置かれていますが、「政府から独立して職務を行う特別の機関」です。日本学術会議でこの課題に取り組むことが考えられます。

すでに、「科学者倫理に思うこと」でも触れたように、日本学術会議でも、関連することがらを審議する「科学研究における健全性の向上に関する検討委員会」が作られました。設立の目的は、

委員会は、科学研究における健全性の向上に資することを目的とし、 科学研究における不正行為防止を含む科学者の行動規範の徹底に向けた 対応に関する事項、及び臨床試験における技術的、理論的質向上に関する 事項を含む臨床試験の今後の制度の在り方に関する事項を審議する。

とされていて、かなり限定的です。学術の「公正局」というには距離があります。

研究不正だけではなく、業績誇称などの学術界や大学界における規範に反する行為を学術界で自浄するための取組みはどうすればよいのでしょうか。学術界の外に第三者機関を置かなければできないことなのでしょうか。Academic Integrity の大きな課題といえるでしょう。

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