大学における情報分野の専門家?

大学では、年度末の今、学生の卒業に関わるさまざまな行事があります。今日は、われわれのところで卒業論文の審査でした。学生は卒業論文とともに、自らの取得単位に関心があるでしょうが、今や、個々の学生が学務情報システムで取得単位・成績を確認できるようになっています。

ちょうど40年前の今頃、工学部4年生で卒業を迎えようとしていたときのことを思い出しました。大学のデータ処理センターで工学部卒業予定者の成績判定のための「情報処理」を徹夜でやりました。当時は貴重な計算資源であったコンピュータを教育・研究に支障のない時間帯に事務処理のために使って、UM(University Management)委員会のもとで事務改善を進めようとしていたのです。もっとも、私は学生でしたので、そのお手伝いということでしたが、自らの卒業判定データを扱うとは思ってもいませんでした。プログラミングの楽しみをおぼえて、センターのコンピュータOKITAC5090を使わせてもらったのが尾を引いたのです。プログラムは1年前から先輩の学生と同期の友人と一緒に書いたものでした。さすがに、実際のデータ処理中にプログラムを書き換えるようなことはありませんでしたが、オペレーションを含めて緊急対応のために教員、職員の方々と夜を過ごしました。なにしろ、磁気テープ上のデータを何度かソーティングして最終的なリストを印刷するという処理でしたので、何時間か3つのデッキで回るリールを見ながら順調に進むよう祈っていました。磁気テープデッキの調子が悪くて巻き戻しができなかったときに、ウラに回ってプリント基板を引っこ抜いて差し戻すという大胆なこともやりました。

40年前には、「情報処理」は民間でもそれほど一般的ではありませんでした。大学では、研究のための科学計算だけでなく、大学の運営に関わる事務処理にもコンピュータを使おうという将来の情報社会を見越した活動が始まっていたわけです。教員と職員の連携によって挑戦的ともいえる活動が行われていたことを思うにつけ、リーダーシップを発揮されたわが恩師の慧眼にあらためて感服するところです。当時の工学部の学生数は今とほとんど変わりません。900人を越えていたと思います。各人が40科目程度をとっても4万件のデータ処理ですから、今ではたいしたことはありませんが、当時は「翌日まで」という制約下で処理するにはそれなりに大変だったのです。

その後、計算機科学(Computer Science)の研究分野に身を置いて、大学で仕事をしてきました。研究や教育はもちろんですが、それとは別に、20数年前の全学ネットワークUTnetの整備など、職員の方々と一緒に仕事をした情報システムの設計や導入もよい経験です。情報ネットワークは私の研究分野ではありませんが、この機会に実践的なことを学びました。少し、距離があったので、実務的にはかえってよかったのかも知れません。

ひるがえって、こんにちの大学の運営に関わる情報システムの現状はどうでしょうか。40年前とは違います。大学が情報処理の先鞭をつけるといった状況ではありません。産業界ではあたりまえになっているような事務処理も大学ではうまく行われていないでしょう。「大学には情報分野の専門家がいるのになぜ?」といったことも聞こえてきます。ところが、情報分野の研究者が情報システムに通じているというわけではありません。もはや、目的に合った情報システムを設計・開発する技術は情報分野の研究を越えた領域にあるといってもよいでしょう。うっかりして、設計を偏狭な考えの教員に委ねてしまうととんでもないことになりかねません。それならば、大学内のだれがどこまで担当するのでしょう?今はこれが難しいのです。しかし、これが現状でしょう。私はまだ解を見つけていません。

情報分野の教員、研究者は自らの研究だけでなく、情報システムや関連する産業界の現状にも関心をもつべきでしょう。なにより、研究成果が社会に貢献する姿を見ることですから。その一方で、まわりの方々は、情報分野の研究者だからといって、情報システムに通じていると思いこんではいけません。分かっている人もいれば、関心のない人もいます。大学に健全な情報システムが整備されて、真に運営基盤として活用される日がくることを願っています。

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